近年日本の夏は記録的な猛暑が続いており、熱中症よる救急搬送者数も年々増加しています。
熱中症対策は、特に屋外で活動する方やスポーツをする子どもたちにとって、命を守るための必須事項です。
この記事では、日常生活に取り入れやすい基本の熱中症対策から、スポーツ現場で実施されている取り組みまでをわかりやすくご紹介します。
基本の熱中症対策
✅ 水分と電解質の補給
水分補給は「喉が渇いた」と感じる前に行うのが鉄則です。
のどが渇いたと感じるのは、口渇中枢が働いたときです。この中枢は、血液の浸透圧や血液量の変化を感知して、喉の渇きという形で身体に「水分が足りないよ」と信号を送っています。
この口渇中枢の働きにはタイムラグがあり、実際には体内の水分がすでに2%程度失われてからでないと「喉が渇いた」と感じにくいのです。
特に高齢者や子どもは、口渇感が鈍くなっているため、自覚症状がないまま脱水が進行してしまうケースも多く見られます。
大量に汗をかいた際は、水だけでなくナトリウムやカリウムを含むスポーツドリンクや経口補水液を活用しましょう。
特に屋外活動時は、定期的に飲むことを習慣づけることが重要です。
✅ 服装と小物の工夫
暑い日は、通気性と吸汗速乾性に優れた服装が理想的です。
汗で濡れたままの服だと、汗の蒸発を妨げて体に熱がこもりやすくなり、 体温が上昇し熱中症のリスクが高まります。
着替えのTシャツをバッグに入れて適切なタイミングで着替えられるようにしましょう。
加えて、帽子やサングラス、ネッククーラーなどのアイテムで直射日光から身体を守りましょう。
✅ こまめな休憩
外で活動する際は、15〜20分ごとに5〜10分間の休憩をとり、日陰や風通しの良い場所で体を冷やしましょう。
体を冷やす最も基本的な場所としては
(1)前頸部の両脇(首の前面の左右)
(2)腋窩部(両脇の下)
(3)鼠径部(股関節の付け根の前面)
これらの場所は体表近くを太い静脈が流れています。
皮膚を通して静脈血を冷やしてあげると、大量の冷えた血液が体内に戻り、効果的に体内を冷やすことができます。
暑熱環境で目安となる休憩間隔
気温30℃以上・湿度60%以上の場合:
15〜20分ごとに5〜10分程度の休憩
可能であれば、1時間に1回は10〜15分以上の休憩をとると安心です
激しい運動や重労働をしている場合:
10〜15分おきに短い休憩
クーラーの効いた屋内や日陰で体を冷やすことが重要
子どもや高齢者の場合:
無理をさせない・こまめな声かけが必要
少しでも「疲れた」「暑い」と感じたら、即休憩
スポーツの現場で実施されている暑熱対策
ここでスポーツの現場で実施されている暑熱対策について紹介していきます。
⚾ 高校野球:クーリングタイムの導入
全国高校野球選手権では、5回裏終了後に10分間のクーリングタイムが導入され、選手はベンチ裏で水分補給や身体冷却を行います。アイスベストや冷却ミストなどを利用し、試合中のパフォーマンス低下や熱中症を予防しています。
課題として、クーリングタイムで冷えすぎて、後の6回で足が攣る選手が多発したという報告もあります。
🐎 中央競馬:馬と人の両方に配慮
JRA(中央競馬)では、夏場のレースで最も暑い時間帯(11時半~15時頃)を避ける休止時間を導入した競走スケジュールに変更。
馬体の冷却用にミストシャワーが設置され、騎手やスタッフ向けの冷却テントも用意されています。
人だけでなく馬も安全とパフォーマンス向上を目的とした暑熱対策がとられています。
⚽ サッカー:クーリングタイム、ドリンクタイム
クーリングタイムは、3分程度の休憩時間で、選手は日陰で体を冷やしたり、水分補給をしたりします。
飲水タイムは、1分程度の休憩時間で、主に水分補給を目的とします。
選手はこの時間を活用して水分補給やアイスベスト着用などで体温を下げ、プレーの質を維持します。
🏃♀️ マラソン・駅伝:時間とルートの工夫
東京五輪のマラソンでは、競技時間を午前6時に変更し、沿道にはミスト噴霧や冷却スポンジを用意。
選手自身も冷水を頭や首にかけるなど、自己冷却を意識して走ることで、熱中症リスクを大幅に軽減しました。
WBGT(暑さ指数)を活用しよう
最近では、「今日は暑いかどうか」を判断するために、WBGT(湿球黒球温度)という指標が広く使われています。これは気温・湿度・輻射熱などを総合的に評価した熱中症リスクの指標で、スポーツ現場や学校、企業でも活用が進んでいます。
暑さ指数 (WBGT) | 注意すべき 生活活動の目安 | 注意事項 |
---|---|---|
危険 (31以上) | すべての生活活動で おこる危険性 | 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。 外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。 |
厳重警戒 (28以上31未満) | 外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。 | |
警戒 (25以上28未満) | 中等度以上の生活 活動でおこる危険性 | 運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。 |
注意 (25未満) | 強い生活活動で おこる危険性 | 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働時には発生する危険性がある。 |
WBGTは、スマホアプリや気象庁のサイトなどで簡単に確認できます。屋外活動やスポーツの前には必ずチェックし、その日の対策を事前に立てるようにしましょう。
まとめ
熱中症対策は、特別なものではなく、“冷やす・飲む・休む”という基本の徹底が大切です。
スポーツの世界では、科学的データに基づいた対策が進んでおり、私たちの生活にも応用できるヒントがたくさんあります。
夏は無理をせず、暑さと上手に付き合いながら健康的に過ごす工夫を取り入れてみましょう。

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