「最近、投げたあとに肘が少し痛いって言ってたけど、すぐ治ったみたいだし大丈夫かな…」
「痛いけど、試合が近いから我慢して投げた」
そんな経験、ありませんか?
成長期の野球選手にとって、「肘の違和感」や「軽い痛み」は、ただの疲労や一時的なものと思われがちです。ですが、その痛みの裏には野球肘という、将来のプレーに影響を及ぼす可能性のある障害が潜んでいることがあります。
特に小・中学生は、まだ骨や関節が未熟なため、大人に比べて肘への負担に弱く、繰り返しの投球によって知らず知らずのうちに障害が進行してしまうことも少なくありません。
この記事では、野球肘の種類や原因、見逃してはいけない症状、そして予防や対策について、わかりやすく解説します。
痛みを我慢することが美徳ではなく、体を守ることが選手生命を守る第一歩です。ぜひ、最後まで読んでいただき、お子さんやご自身の肘の健康を見直すきっかけになれば幸いです。
野球肘とは?
野球肘とは、投球動作によって肘にかかる過剰な負担が原因で起こる障害の総称です。特に成長期の選手は、骨や関節がまだ完全に発達していないため、繰り返しの投球が大きなダメージにつながります。
野球肘は、主に痛みの出る場所(内側・外側・後方)によって、以下の3つのタイプに分類されます。
【1】内側型【内側上顆障害】
特徴
投球時、特にボールをリリースする瞬間に肘の内側が強く引っ張られるため、内側側副靭帯や屈筋群、そして成長軟骨にストレスが集中します。これは、肘がまだ成長段階にある選手にとって非常に危険です。
主な原因
- 投げすぎ・登板過多
- 肘下がりの投球フォーム
- 肩や股関節の硬さによる負担の偏り
よくある症状
- 肘の内側が押すと痛い
- 投げたあとにズキッとした痛み
- 投球中に力が入りにくい
【2】外側型【離断性骨軟骨炎】
特徴
投球動作の中で、肘の外側にある上腕骨小頭と橈骨頭がぶつかり合い、関節の軟骨がすり減ったり、はがれたりする障害です。進行すると、はがれた骨のかけらが関節内に入り込み、肘が動かなくなることも。
主な原因
- 肘の使いすぎによる圧迫ストレス
- 関節のねじれや歪み
- 投球フォームの不良(腕が振り遅れるなど)
よくある症状
- 肘の外側の痛み
- 可動域の制限(伸ばしきれない・曲げにくい)
- ロッキング(肘が動かなくなる瞬間がある)
【3】後方型【肘頭疲労骨折・後方インピンジメントなど】
特徴
投球時に肘を強く伸ばす動き(フォロースルー)で、肘の後ろ側の骨同士がぶつかることで生じる障害です。特に、肘頭と呼ばれる骨に繰り返し衝突が起こると、骨や軟骨に損傷が出てきます。
主な原因
- 無理に肘を伸ばしきる投球フォーム
- 下半身の連動不足による腕の振りすぎ
- 肩甲骨や体幹の使い方の未熟さ
よくある症状
- 肘の後ろ側が痛い
- 肘を完全に伸ばせない
- 投球後に肘の奥がズーンと重だるい
なぜ成長期に多いの?
成長期の選手は、まだ骨の一部が成長軟骨というやわらかい組織でできています。ここに無理な力が加わると、骨折や変形を起こすリスクが非常に高くなるのです。
また、成長のスピードに筋力や柔軟性が追いついていないことも多く、フォームの乱れや疲労の蓄積が起きやすくなっています。
治療・対処法
野球肘は、「早期発見」と「正しい対処」で十分に回復が見込める障害です。逆に言えば、痛みを我慢して投げ続けることが最も危険です。この項目では、野球肘が疑われる場合の基本的な対応から、回復後のリハビリや再発予防まで、段階ごとに詳しく解説します。
① まずやるべきことは「安静」
痛みが出た場合、最優先すべきことは投球の中止です。
軽い痛みでも、肘の内部で炎症や組織の損傷が進行している可能性があります。無理をして悪化させると、治るまでに数か月〜半年以上かかるケースもあります。
✅ポイント
- 練習・試合をすぐに中止する
- 投げない期間は最低でも2〜3週間が目安(医師と相談)
- アイシングなどで炎症を抑える(特に痛みが強い初期)
② 必要に応じて整形外科を受診
症状が数日経っても改善しない、あるいは肘が曲げにくい・伸ばしきれないといった機能障害が出ている場合は、スポーツ整形外科などの専門医を受診しましょう。
✅医療機関での対応
- レントゲンやMRIによる精密検査
- 成長軟骨の損傷、骨軟骨片の剥離などの診断
- 必要に応じて装具や固定、手術(進行した外側型など)
③ 痛みが落ち着いたら「リハビリ」開始
痛みが治まったからといって、すぐに投球を再開するのはNGです。
肘の安静中に失われた柔軟性や筋力を段階的に回復させるリハビリが必要です。
✅リハビリ内容
- 肘関節の可動域改善
- 肩・肩甲骨まわりの安定性強化
- 股関節・体幹の連動トレーニング
- 投球フォームの見直しと指導
特に、肩・肩甲骨・股関節など全身の連動性を高めることは、肘にかかる負担を減らすために非常に重要です。
④ 投球復帰のステップを踏む
痛みがなくなり、関節の動き・筋力・フォームの問題が改善されたら、段階的な投球再開に進みます。
このプロセスには1〜2か月以上かけることが理想です。焦って完全復帰を急がず、「痛みのない状態を保てるか」を最優先に判断します。
また、少しでも違和感が出たら報告する習慣をつけることも重要です。
本人・保護者・指導者が協力して、ケガを言いやすい環境づくりが求められます。
まとめ:大切なのは「今」ではなく「未来」
野球肘は、決して特別な選手だけに起こるものではありません。
どんなに技術のある選手でも、身体に無理を重ねてしまえば、思わぬところでブレーキがかかってしまいます。
「チームのために我慢して投げたい」
「試合に出られないのが悔しい」
その気持ちはとても大切ですし、野球が本当に好きだからこそ出てくる感情だと思います。
でも忘れてはいけないのは、今の1試合のために、将来の野球人生を台無しにしてはいけないということ。
痛みを我慢することが強さではなく、自分の体を守る選択が本当の意味での責任ある判断です。
野球は長く楽しめるスポーツです。
高校、大学、社会人、草野球、プロ…。ステージはいくらでもあります。
だからこそ、「いま」ではなく「未来」のために、自分の体に目を向けてください。
このブログが、少しでもご自身やお子さんの体を守るヒントになれば幸いです。
無理をせず、しっかりと体を整えながら、これからも野球を心から楽しんでください。
肘の違和感など野球障害、スポーツ障害にお悩みの方は西宮・甲子園のFany整体鍼灸院へお気軽にご相談ください。

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