現代社会では、デスクワークやスマートフォンの長時間使用が当たり前になり、多くの人が肩こりや腕の疲れ、しびれを感じています。そんな中、「胸郭出口症候群」という病名を耳にしたことはありませんか?
胸郭出口症候群は、首から腕にかけて走る神経や血管が、胸郭出口と呼ばれる部位で圧迫されることで起こるさまざまな症状の総称です。症状は軽度の違和感から、日常生活に支障をきたすほどの痛みやしびれまで多岐にわたります。
今回は、この胸郭出口症候群について、原因や症状、そして日常生活での予防策まで解説していきます。
胸郭出口症候群とは?
胸郭出口症候群とは、首から出る神経(腕神経叢)や鎖骨下動脈・鎖骨下静脈が、胸郭出口と呼ばれる狭い通路で圧迫されることで発症する症状群のことです。
胸郭出口とは?
首と肩の間にある鎖骨や肋骨、筋肉で構成される狭い空間のことです。この空間を腕神経叢や鎖骨下動脈、鎖骨下静脈が通っています。
3つの主なタイプ
胸郭出口症候群は、圧迫される部位や原因により、大きく次の3タイプに分けられます。

- 斜角筋症候群:首の横にある斜角筋の間で神経が圧迫されるタイプ。
- 肋鎖症候群:鎖骨と第一肋骨の間で血管や神経が圧迫されるタイプ。
- 過外転症候群(小胸筋症候群):肩を強く上げる動作(過外転)などで小胸筋が神経や血管を圧迫するタイプ。
どのタイプも、症状や発症のきっかけは似ているものの、治療や対策には違いがあるため、正確な判断が重要です。
主な症状
胸郭出口症候群は、肩から腕、手にかけてのさまざまな症状を引き起こします。代表的な症状には以下のようなものがあります。
神経の圧迫による症状
- 腕や手のしびれ、ピリピリとした感覚
- 握力の低下や物を落としやすくなる
- 肩から腕にかけての鈍い痛みやだるさ
- 肩甲骨周辺の違和感
血管の圧迫による症状
- 手や指の冷感
- 色の変化(蒼白や紫色)
- 腕のむくみや重だるさ
症状が悪化しやすい状況
- 長時間のデスクワーク
- 重い荷物を持つ
- 車の運転を続ける
- 腕を長時間上げたままの作業(美容師や大工など)
これらの症状は、特に朝起きたときや、同じ姿勢を続けた後に強く出ることが多いです。
また、症状が進行すると、日常生活に支障をきたすこともあります。
原因とリスク要因
胸郭出口症候群の原因は多岐にわたりますが、特に以下の4つが主要なリスク因子として知られています。
姿勢不良
長時間のデスクワークやスマートフォン操作により、猫背や巻き肩などの姿勢不良が慢性化すると、胸郭出口周辺の空間が狭まりやすくなります。肩が前方に出ることで鎖骨の位置も変わり、神経や血管が圧迫されるリスクが高まります。特に首が前に出るようなストレートネックも影響を与えます。
筋肉の緊張
首や胸の筋肉(特に斜角筋、小胸筋)が過度に緊張して硬くなると、それらの隙間を通る神経や血管に圧力がかかりやすくなります。この筋肉の硬直は、運動不足だけでなく、緊張やストレス、冷えによっても引き起こされることがあります。筋肉の柔軟性低下は慢性的な血行不良にもつながります。
スポーツや仕事の影響
野球、バレーボール、水泳など腕を繰り返し使うスポーツでは、肩周辺の筋肉や関節に負担がかかり、胸郭出口部位の圧迫を招きやすくなります。また、美容師や大工など腕を高く挙げる作業を日常的に行う職業の方は、肩の過度な外転や内旋によって神経や血管が圧迫されやすく、ストレスがかかりやすくなります。
体型や性別
細身で首の長い女性に比較的多くみられる傾向があります。これは筋肉量の少なさや骨格的な構造が影響しているとされます。また、生まれつきの骨格異常、たとえば通常は存在しない頸肋(首の骨の一部が肋骨状に発達したもの)があると、物理的に胸郭出口のスペースが狭まり、圧迫のリスクが格段に高まります。
予防と日常生活の工夫
胸郭出口症候群の予防や再発防止には、日常生活の中での意識的な工夫が非常に重要です。以下の4つのアプローチを継続的に取り入れることで、胸郭出口の圧迫を軽減し、症状の改善につながります。
ストレッチと筋トレ
・1日数回、首から肩・胸にかけてのストレッチを行うことで筋肉の柔軟性を保ちます。
・具体的には、斜角筋ストレッチ、小胸筋ストレッチ、肩甲骨回しなどが効果的です。
・筋トレでは、僧帽筋中部・下部や菱形筋を鍛えることで、肩甲骨の安定性を高め、正しい姿勢の維持に役立ちます。
・フォームローラーなどを使った筋膜リリースも有効です。
姿勢の改善
・デスクワーク時は背筋を伸ばし、骨盤を立てた座り方を意識しましょう。
・肩が内側に巻き込まれないよう、軽く肩甲骨を寄せて胸を開くように保ちます。
・モニターの高さは目線のやや下に設定し、スマートフォン使用時は首を傾けすぎないよう注意。
・寝姿勢にも気を配り、枕の高さを適切にして首・肩への負担を減らすことも効果的です。
こまめな休憩
・長時間の作業中には1時間に1回は席を立ち、腕を回す、肩をすくめるなどの軽い運動を取り入れましょう。
・オフィスでは立ち上がってストレッチをしたり、肩や首を左右に傾けて筋肉をリラックスさせることも大切です。 ・短時間でも血行を促すだけで、筋肉の緊張緩和につながります。
正しい呼吸
・浅い呼吸ではなく、腹式呼吸を意識することで、横隔膜と胸郭周辺の筋肉をしっかりと動かします。
・深く吸って、ゆっくり吐くことでリラックス効果も高まり、ストレス性の筋緊張も和らぎます。
・胸を広げるような大きな呼吸を意識することで、小胸筋や肋間筋の柔軟性も保たれます。
まとめ
肩や腕のしびれって、ついつい「疲れてるだけかな?」って思いがちですが、実は胸郭出口症候群が原因かもしれません。日頃の姿勢やちょっとした動作のクセが、体に思わぬ負担をかけていることもあります。
今回ご紹介したように、日常生活の中で少し意識を変えるだけでも、症状の予防や改善につながります。ストレッチを取り入れたり、姿勢を見直したり、呼吸を深くすることも大事なケアの一つです。
もし「これ、自分も当てはまるかも?」と思ったら、無理せずに専門の先生に相談してみてください。早めの対処が、より快適な毎日への第一歩です!
腕の痺れやだるさ、力が入りにくいなどの症状にお悩みの方は西宮・甲子園のFany整体鍼灸院へお気軽にお問い合わせ下さい。

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