野球を愛するすべての選手にとって、肩の健康は欠かせないものです。
とくに投手を中心に、繰り返される投球動作によって肩に負担がかかり、痛みや違和感を感じるようになる「野球肩」は、多くのアスリートを悩ませる代表的なスポーツ障害です。
「肩が痛くて思うように投げられない…」「練習を休むべきか、我慢して続けるべきか迷っている」。そんな経験をしたことがある方も少なくないのではないでしょうか?
本記事では、野球肩とは何か、その原因・症状・治療法、そして再発防止のための予防策まで、分かりやすく解説していきます。特に成長期の学生や指導者、保護者の方にもぜひ読んでいただきたい内容です。
野球肩とは?
野球肩とは、主に投球動作の繰り返しによって肩関節に負荷がかかり、痛みや炎症などの障害が起こる状態を指す、総称的な言葉です。
医学的にはさまざまな診断名(例:腱板炎、インピンジメント症候群、SLAP損傷など)がありますが、一般的には投球による肩の痛みをまとめて野球肩と呼んでいます。
● どんな人がなりやすい?
中学生・高校生の投手に多い
▷成長期は骨や関節がまだ発達段階にあり、投球フォームが未熟なことも多いため、肩への負担が大きくなります。
プロ・アマ問わず、頻繁に投球する選手
▷ピッチャーだけでなく、キャッチャーや外野手でも発症することがあります。
投球数や連投が多い選手
▷休養が足りないと、疲労が蓄積されて炎症が起こりやすくなります。
● 野球肩は「肩の故障」の始まり
野球肩は、ただの一時的な痛みではなく、進行すると日常生活にも支障をきたす重大な障害につながる可能性があります。初期段階での適切なケアと、根本的な原因の見直しが何より重要です。
野球肩の原因
野球肩の発症には、いくつかの要因が重なっていることが多くあります。以下に代表的な原因を詳しく説明します。
① 投球の繰り返し(オーバーユース)
野球肩の最大の原因は、**投球動作の反復による「使いすぎ」**です。投球は肩関節にとって非常に複雑かつ強い負荷を伴う動作であり、1日に何十球・何百球と繰り返されることで、筋肉や腱、関節組織に微細な損傷が蓄積されていきます。
② 正しくないフォーム
フォームに崩れがあると、肩に余分な負担がかかりやすくなります。たとえば、肘の位置が低い、体幹の使い方が不十分などのフォームエラーは、肩周辺の構造にダメージを与える原因となります。
③ 柔軟性や筋力の不足
肩周りの筋肉、特に肩の安定性を支えるローテーターカフや肩甲骨周囲の柔軟性・筋力が不十分だと、肩関節の安定性が損なわれ、故障のリスクが高まります。
特に成長期の選手では、骨成長と筋肉の柔軟性のバランスが崩れやすく注意が必要です。
④ 投球数や登板間隔の管理不足
適切な投球数の制限がない、休養期間が短いなどの環境もリスクを高めます。特に連投や短期間での登板過多は、肩へのダメージを加速させる大きな要因です。
各連盟が投球数制限のガイドラインを定めているので、そちらを参考にしてもらうのも良いと思います。
学童野球に関する投球数制限のガイドライン:公益財団法人 全日本軟式野球連盟
【学童部】投球数制限に係る競技者必携の改正について:公益財団法人 全日本軟式野球連盟
野球肩の主な症状
野球肩の症状は人によって異なりますが、以下のような共通点が多く見られます。いずれも早期発見・早期対応が鍵になります。
✅ 肩の痛み
- 投球時に鋭い痛みやズキッとする感覚がある
- 特にリリースの瞬間や投げ終わりに痛みを訴えることが多い
- 徐々に痛みが強くなり、日常生活にも影響が出るケースも
✅ 肩の可動域が制限される
- 肩が十分に上がらない、回らない
- 投げたいけど動かないといった違和感がある
- 肩を後ろに引く動作(例えばユニフォームを着る動作)で痛みが出る
✅ 引っかかるような感覚
- 投球中に「カクッ」とした引っかかりや不安定感
- 一時的に力が抜ける、しびれるような感覚も報告されます
✅ 投球後の疲労感・熱感
- 肩全体にだるさや熱を持ったような感覚
- 運動後、数時間~翌日にかけて違和感が残る場合は要注意
野球肩の主な疾患とは?
野球肩はひとつの病名ではなく、複数の肩の障害の総称です。
ここでは、野球選手に多く見られる代表的な疾患を簡単に紹介します。
腱板炎
肩の安定を支える腱板(ローテーターカフ)という筋肉の腱に炎症が起こる状態です。投球後の痛みやだるさ、肩を上げづらいといった症状が特徴です。
インピンジメント症候群
肩を動かすときに骨と腱がぶつかり合い、痛みが生じる状態です。特に腕を上げた時に「引っかかる感じ」がある場合は、この症候群の可能性があります。
SLAP損傷(スラップ損傷)
肩関節の関節唇が投球動作の繰り返しにより傷つく障害です。深い痛みや、力が入らない感覚が特徴で、MRI検査で診断されることが多いです。
上腕二頭筋長頭腱炎
上腕二頭筋の一部が炎症を起こす状態で、肩の前面に痛みが出ます。投球時の違和感や、肘の角度で痛みが強くなるのが特徴です。
野球肩の治療法
野球肩の治療は、症状の重さによって方法が異なりますが、基本的には次のような流れで行います。
① 安静・アイシング
まずは肩を使わずに休ませることが大切です。痛みがある間は無理な投球はNG。アイシングで炎症を抑えることも効果的です。
② リハビリ
痛みが落ち着いてきたら、肩周りの筋力や柔軟性を回復するトレーニングを行います。専門家の指導のもとで段階的に回復を目指します。
③ 必要に応じて医療機関での治療
炎症がひどい場合や、構造的な損傷が疑われる場合は、整形外科での検査(MRIなど)や薬物治療が必要になることもあります。
野球肩の予防法
予防は何よりも重要です。日々の習慣や意識を少し変えるだけで、野球肩のリスクを大きく下げることができます。
✅ ストレッチと体づくり
- 肩や肩甲骨まわりの柔軟性を保つストレッチ
- 体幹やローテーターカフを鍛える筋トレ
✅ 正しいフォームを学ぶ
- 自己流ではなく、コーチやトレーナーからの正しい指導を受けることが大切です。
✅ 投球制限と休養の徹底
- 学生野球では特に、投球数の管理と十分な休養を守ることで故障リスクを下げられます。
まとめ:野球肩を防ぐことは、野球人生を守ること
野球肩は、野球というスポーツに真剣に取り組む人にとって、決して他人事ではない障害です。
とくに投手に多く見られますが、ポジションを問わず、投球動作が多い選手にとっては常に隣り合わせのリスクといえるでしょう。
今回の記事では、野球肩の基本的な知識(定義・原因・症状)から、治療の進め方、予防のポイントまでを解説してきました。改めて大切なポイントをまとめます。
野球肩の理解ポイント
- 野球肩とは:投球動作によって肩関節に負荷がかかり、痛みや障害を生じる状態の総称。
- 主な原因:オーバーユース、不良フォーム、筋力や柔軟性の不足、投球制限の不備など。
- 症状の見逃し厳禁:痛みや違和感、肩の引っかかり、動かしづらさを感じたら、早期に対応することが重要。
- 治療の基本:無理せず休養し、必要に応じて専門家の治療を受ける。段階的なリハビリも不可欠。
- 予防が何より重要:正しいフォーム、体づくり、日々のケア、そして無理をしないことが、故障を防ぐ最大のポイント。
再発を防ぐには
一度治ったからといって、油断は禁物です。
野球肩は再発しやすい障害でもあります。そのため、予防習慣を継続的に取り入れることが何よりも重要です。
- 練習前後のウォームアップ・クールダウン
- 毎日のストレッチと肩甲骨まわりの筋トレ
- 定期的なフォームチェックとトレーナーのアドバイス
- 痛みが出たら早めに休む勇気
これらを実践することで、野球肩だけでなく他の投球障害も未然に防げるようになります。
最後に
野球は長く続けてこそ、本当の楽しさが見えてくるスポーツです。だからこそ、今の一球に全力を尽くすだけでなく、10年後の自分の肩にも目を向けてほしいと思います。
野球肩は、正しい知識と対策で未然に防ぐことができる障害です。
選手自身はもちろん、指導者や保護者の方も、ぜひ今回の内容を参考に、チーム全体での健康管理に取り組んでいただければ幸いです。
肩の違和感など野球障害、スポーツ障害にお悩みの方は西宮・甲子園のFany整体鍼灸院へお気軽にご相談ください。

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